医療コラム
インプラントは痛くない?術後の痛みや軽減方法などを解説
医療コラム
目次
インプラントの手術は痛くない
・インプラント手術の痛みについて
・不安な場合は静脈内鎮静法の併用がおすすめ
インプラントの術後に感じる3つの痛み
・歯肉を切開した傷の痛み
・抜歯をしたことによる痛み
・骨量不足を補う骨造成の痛み
インプラント治療の流れ
・カウンセリング
・術前検査
・治療計画
・インプラント一次手術
・治癒期間
・インプラント二次手術
・人工歯(上部構造)の作製と装着
・メインテナンス・定期検診
インプラント術後の痛みを軽減させる6つの方法
・鎮痛剤の服用や患部の冷却
・傷口を触らない
・食事は固い物を避けて柔らかいものを選ぶ
・血行が良くなる行動は避ける
・喫煙・飲酒は避ける
・身体を休め回復力を高める
導入
歯周病や虫歯などで抜歯を行った後に、歯がない場所を補う方法の一つにインプラントがあります。
ただ、インプラントは手術が必要になるため『痛くないのか』と不安な方も多いでしょう。
この記事では、インプラントは痛くないのか、インプラント治療の流れや痛みを軽減させる方法について解説します。
インプラントを検討している方、痛みに不安を抱えている方はぜひ最後までご覧ください。
インプラントの手術は痛くない
インプラントの痛みについて、まずは手術中に痛むのかを紹介します。
インプラント手術の痛みについて
インプラントは、歯肉を切開して顎の骨に穴(インプラント窩)を開ける手術を行うため、痛みに対する不安が大きいかもしれません。
しかし、インプラントの手術中は局所麻酔を行うため痛みを感じることはほとんどありません。
麻酔の効き方や持続時間には多少の個人差がありますが、それぞれに合わせた麻酔量を調整し、手術中に麻酔が切れかけた場合は追加も行われます。
唯一痛みを感じるとすれば、麻酔を行うための注射の痛みです。
注射の痛みに対しても不安がある場合は、できるだけ痛みを感じないように表面麻酔(麻酔クリーム)などの併用ができるため、事前に相談してみましょう。
不安な場合は静脈内鎮静法の併用がおすすめ
インプラントの箇所が複数あったりどうしても不安を感じてしまったりする場合は、静脈内鎮静法がおすすめです。
静脈内鎮静法とは、鎮静薬などを静脈内に投与する方法で半分寝ているような状態で手術を受けられるものです。
手術中の記憶は残りにくく、気が付くと手術が終わっているでしょう。
静脈内鎮静法のメリットは、リラックスした状態で手術を受けられたりあっという間に手術が終わったように感じられたりする面です。
静脈内に投与する薬剤量は、呼吸など全身の状態を確認しながら調節しますが、極めて稀にアレルギー反応や不整脈、その他合併症を引き起こす可能性があります。
また、薬剤が完全に抜けるまで自動車の運転ができないなど、日常生活の動作に一定の制限がでます。
インプラントの術後に感じる3つの痛み
インプラントの手術中は麻酔が効いているため、痛みはほとんど感じません。
しかし、麻酔が切れると主に3つの痛みを感じる場合があります。
痛みの度合いや感じ方は個人差が大きく、痛みを感じない方もいますがしばらく痛みが続いてしまう方もいて、ピークは術後2〜3日程度です。
ここではインプラントの術後に感じる3つの痛みについて解説します。
歯肉を切開した傷の痛み
インプラントの手術では、顎の骨に穴(インプラント窩)を開けるために歯肉の切開を行います。
麻酔が切れると歯肉を切開した傷の痛みが生じますが、処方される鎮痛剤で痛みが和らぐ場合がほとんどです。
痛みのピークは術後2〜3日ほどで、自制内(我慢できる程度の)痛みが続く期間は7〜10日ほどです。鎮痛剤を使用しても我慢できないほどの痛みがあったり、10日を過ぎても痛みが治まらなかったりする場合は、傷口が開いていたり歯肉になんらかのトラブルが起きている可能性があります。
無理せず、手術を受けた歯科医院に相談しましょう。
抜歯をしたことによる痛み
インプラント手術では、人工歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込むため抜歯が必要です。
ただ、インプラントにするためには必ず抜歯が必要であるわけではなく、周りの歯や歯肉の状態によっては抜歯をせずに手術を進める場合もあります。
抜歯には麻酔を使用するため痛みは感じませんが、抜歯後は免疫・防御反応などから痛みや腫れが生じる可能性があります。
通常腫れや痛みのピークは2~3日、大規模な手術の場合は5~10日程続くこともあるでしょう。
抜歯による痛みも歯肉を切開した傷の痛み同様に、通常は処方される鎮痛剤を服用すれば自制内の痛みです。
ただ、痛みが10日以上続く、鎮痛剤を服用しても我慢できないほどの痛みの場合は、細菌感染(抜歯後感染)や骨面の露出(ドライソケット)などの可能性があるためなるべく早く手術を受けた歯科医院に相談しましょう。
骨量不足を補う骨造成の痛み
インプラント手術では、顎の骨を削り人工歯根(インプラント)を埋め込むため、一定の骨量が必要です。
もし、骨量が足りずインプラントを支えられないなどの可能性があれば、骨造成を行います。
骨造成とは、骨の量を増やす治療であり、主に以下の3つの種類があります。
ソケットリフト | ・上顎の骨に高さが足りない場合に行う ・上顎の骨の高さが5mmをこえる場合に採用される ・上顎洞の1mm前まで穴を開け、上顎洞に押すことで高さを確保する ・傷が小さく、治療期間が短いため身体への負担が少ない ・上顎以外や上顎の高さが5mm以下の場合は一般に行わない |
サイナスリフト | ・上顎の骨の高さが足りない場合に行う ・上顎の骨の高さが5mm以下の場合に採用される ・歯肉を切開し上顎洞を開窓して上顎洞粘膜を挙上し骨補填材を填入する ・骨造成後、4~6か月程度経過してからインプラント手術を行う ・ソケットリフトよりも治療期間は長い |
GBR法 | ・顎の骨の幅や高さが足りない場合に行う ・骨補填材や自身の粉砕した骨(自家骨)を骨欠損部に入れて骨の再生を促す治療 ・骨再生までに3~6か月程度かかる |
骨造成のメリットは、骨量を確保できるためインプラント手術の安全性が高まる点やインプラントの寿命が長くなる点です。
デメリットとしては、治療の長期化や骨造成が難しいパターンがある点です。
骨造成の範囲などによって痛みの強さが異なりますが、手術の範囲が大きければその分痛みも強く出る傾向にあり、痛みのピークは3日ほどで10日ほど痛みが続きます。
痛みは鎮痛剤の服用である程度抑えられますが、腫れが強く出るケースもあります。
冷やすことで多少治まることもありますが、あまりにも気になる場合は治療を受けた歯科医院に相談してみましょう。
インプラント治療の流れ
インプラントは日帰りでできる場合も多いですが、外科手術に分類されるため、実際に手術を受ける前には歯科医師との綿密な打ち合わせや検査が必要です。
ここでは基本的なインプラント治療の流れについて解説します。
インプラント治療は全行程を終了するまでに6か月以上かかる場合もあります。
骨造成の有無などによって詳しい治療の流れは異なるため、歯科医師と相談しつつ進めて行きましょう。
カウンセリング
まずはカウンセリングにて、インプラントに関する正しい知識や、治療方法、手術内容などの説明を受けます。
このときに、インプラント治療で考えられるリスクについての説明もあるため、わからない点や不安な点ががあれば納得できるまで質問しましょう。
カウンセリングの時間は個人差がありますが、大体1時間程度です。インプラントに関する説明や副作用、リスクなどを理解したうえで、インプラント治療を受けるか改めて検討してしましょう。
インプラント治療を行うことが決まれば、術前検査を行います。
術前検査
インプラントは顎の骨に埋め込むため、顎の骨の大きさや高さ、神経や血管の場所などを詳細に調べる必要があります。
どんなに腕のよい歯科医師でも、術前検査なしでは神経や血管を傷つける可能性があるため、術前検査は必須です。
術前検査では、主に以下の点を検査します。
・顎の骨の骨密度と量
・神経や血管の場所
・歯周病などの検査
・残っている歯の状態
・噛み合わせ
・顎関節の状態 など
神経や血管の場所、顎の骨に関しては歯科用CTスキャンを行い細部まで検査を行います。
治療計画
術前検査の結果を見て、個人に合わせた治療計画を立てます。
ただ、術前検査の結果によってはインプラント治療ができない場合があります。インプラント治療のリスクがある例としては以下のとおりです。
・歯周病になっている
・糖尿病などの全身性の病気で状態が良くない
・骨造成を前提にしても顎の骨が足りない など
これらの場合、まずは病気の治療を優先し、状態が改善してからインプラント治療を開始するか、別の治療法を検討することになります。
インプラント治療ができる場合、治療計画の説明を受けて納得した場合は契約書をかわし、1回目の手術の日程を決めます。
インプラント一次手術
手術は一次と二次の2回に分けて行うのが基本で、一次インプラント手術では顎の骨にインプラントを埋め込む段階まで行います。
歯肉を切開し、顎の骨にインプラントを埋め込みます。
所要時間は本数によって変わりますが、大体1〜3時間程度です。
手術当日は特別な用意などはないため、リラックスした状態で手術に挑みましょう。
治癒期間
インプラント一次手術後、1~2週間程経過したらインプラントを埋め込んだ際に使用した糸を抜糸します。
インプラント一次手術から二次手術までは、2~4か月程度の治癒期間を開ける必要があります。骨の状態によっては6か月を要します。
前歯など歯がない部分が目立つ場合は、仮歯を使用することも可能です。
インプラント一次手術後、埋め込んだインプラントが顎の骨との結合が確認できれば二次手術を行います。
インプラント二次手術
インプラント二次手術ではインプラントと骨の結合を確認し、人工歯(上部構造)をインプラント体(埋め込んだインプラント)に接続するためのアバットメントの取り付けを行います。
ここで取り付けるアバットメントは歯の土台部分にあたり、人工歯を取り外すと歯肉から見える部分です。
インプラントの頭にキャップを装着し、1~2週間程度歯肉の形が整うのを待ちます。
稀にインプラントと骨の結合しない場合がありますが、その場合は再度インプラントの入れなおしを行います。
人工歯(上部構造)の作製と装着
歯型を取り、噛み合わせなどを考慮したオーダーメイドの人工歯を作製します。
人工歯の装着は切開などを伴わないため、手術は行わず、スクリューやセメントを用いて固定したりします。
装着後、噛み合わせや見た目などで納得できない場合は修正などを行い、自分に合う人工歯にしていきましょう。
メインテナンス・定期検診
インプラント完成後は、天然歯同様に定期的なメインテナンスが必要です。
3~6か月に1回程度メインテナンスや検査を行い、口腔内の健康状態やインプラントの状態を確認します。
定期的なメインテナンス・検診は、インプラントを長持ちさせるために必要なため、しっかり通うようにしましょう。
インプラント術後の痛みを軽減させる6つの方法
インプラント術後の痛みは個人差がありますが、できるだけ軽減させたいと思うのは当然です。
最後に、インプラント術後の痛みを軽減させる6つの方法を紹介します。
鎮痛剤の服用や患部の冷却
インプラント治療を受けるとほとんどの場合、鎮痛剤や抗生剤などを処方されるため、歯科医師の指示どおりに服用しましょう。
また、患部の冷却も初期の腫れや痛みの軽減に効果的です。
保冷剤などを直接肌にあてずに、タオルなどを巻いて冷やし過ぎないように注意しましょう。
基本的には、鎮痛剤を服用すれば我慢できる痛みですが、決められた用法・容量を服用しても我慢できない痛みの場合は追加で鎮痛剤を服用するのではなく、歯科医師へ相談しましょう。
傷口を触らない
手術後は傷口がどうしても気になるかもしれませんが、舌や指で触れないようにしましょう。
傷口に触れて刺激をしてしまうと痛みが出やすくなったり、細菌感染して化膿したりする可能性があります。
できるだけ傷口には触れないように、食事をする際にも手術をした側の歯は使わないようにしましょう。
食事は固い物を避けて柔らかいものを選ぶ
インプラントの手術後は特に飲食の制限はありませんが、固い物は傷口を刺激してしまう可能性があるため、柔らかく消化のよい食事がおすすめです。
また、辛い食べ物などの刺激があるものは、傷口に触れると痛みが出やすいため、固い物同様に避けるようにしましょう。
血行が良くなる行動は避ける
インプラントの手術後は血行が良くなる行動は避けましょう。
血行が良くなる行動は、痛みを強めるだけではなく、腫れがひどくなってしまう可能性があります。
激しい運動や飲酒、長風呂などは避けて、安静にして過ごすことをおすすめします。
最低でも痛みのピークが過ぎるまでは、入浴はシャワーのみにして湯船に浸かるのは避けましょう。
喫煙・飲酒は避ける
喫煙・飲酒は歯科医師の許可が出るまでは避けるようにしましょう。
喫煙は傷の治りを遅くするだけではなく、インプラントと骨の結合がうまくいかないリスク因子です。
また、先程も触れたとおり飲酒は血行を良くするため、痛みや腫れを増長させる原因になります。
身体を休め回復力を高める
身体を休め、回復力を高めることを意識しましょう。
休息や睡眠が不十分な場合、回復力が低下するだけではなく免疫力も低下するため、細菌感染のリスクが高くなったり痛みが続いたりする原因になります。
インプラントの骨への親和性は骨免疫がかかわっています。手術は思っている以上に体力を使うため、術後はいつもよりも休息や睡眠を多く取るように心がけましょう。
まとめ
インプラントは、歯肉を切開して顎の骨に穴(インプラント窩)を開ける手術を行うため、痛みに対する不安が大きいかもしれません。
しかし、手術中は局所麻酔を行うため痛みを感じることはほとんどなく、唯一痛みを感じるとすれば、麻酔を行うための注射の痛みです。
インプラントの箇所が複数あったり手術ということでどうしても不安を感じてしまったりする場合は、静脈内鎮静法がおすすめです。
痛みを感じるのは術後の歯肉を切開した痛み・抜歯による痛み・骨造成の痛みの3つになります。
基本的には鎮痛剤の服用で我慢できる程度の痛みですが、どうしても我慢できない場合は手術を受けた歯科医院を受診するようにしましょう。
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